ChatGPTをはじめとする生成AIの登場で、仕事は確実に効率化しました。企画書を作る時間が短縮され、メール文面の作成もスムーズ。中小企業の現場でも、AIを使いこなす社長や担当者が増えています。
しかし、その「便利で賢いAI」を、悪意ある人間が使ったらどうなるでしょうか。
同じAI技術が、今度はあなたの会社を攻撃するために使われる。これが今、世界中で現実に起きていることです。
AIは文章や画像を作るだけではありません。攻撃者はAIを使って、次のようなことを自動化しています。
つまり、これまで人手に頼っていた“サイバー攻撃の下準備”が、AIの力で一瞬で終わるようになったのです。 標的に選ばれるのは「守りの弱い企業」から順番に。大企業より先に、中小企業が狙われています。
AIは善悪を判断しません。使う人間の目的に忠実に動きます。 便利さの裏側にある“もう一つのAI”を、私たちは知っておく必要があります。
攻撃者が最初に狙うのは「放置された機器」です。 動いているように見えても、実際は古いソフトウェアが穴だらけというケースが多い。 VPN装置やNAS(共有サーバー)の脆弱性をAIがスキャンし、侵入のきっかけを見つけます。
対策はシンプルです。サポートが終了した機器は撤去する。 そして、ファームウェアの更新を“月に一度”確認する。 「動いているから大丈夫」ではなく、「更新しているから安心」と言える状態にしましょう。
IDとパスワードだけの防御は、もはや限界です。AIは膨大な漏洩データをもとに、自動でパスワードを照合し突破してきます。
メールやクラウド、VPNには多要素認証(MFA)を導入しましょう。 スマホに届く6桁のコードを入力するだけで、攻撃者の自動ログインを99%防げます。 しかもGoogleやMicrosoftは無料で提供しています。
ランサムウェア(身代金ウイルス)は、AIが自動的にネットワーク上のすべてのフォルダを暗号化します。 NASもクラウドも、接続していればまとめて人質です。
対策は、オフライン(USBディスクや外付けHDD)とクラウドの両方にバックアップを取ること。 そして、週に1回、復元テストを行うことです。 バックアップを“取るだけ”ではなく、“戻せること”を確認して初めて、意味があります。
AIが作るメールは非常に自然です。件名も文体も完璧で、見分けがつきません。 つまり、最後の砦は「人」です。
年に1〜2回、フィッシングを模した“疑似攻撃訓練”を行いましょう。 クリック率や報告率をデータで可視化すると、社員の意識が変わります。 メールを開く前に「送信元ドメイン」「添付ファイル拡張子」「URLの正体」を確認する文化を根付かせることが最大の防御です。
インシデント(被害)が起きてから専門家を探しても間に合いません。 復旧まで数日〜数週間かかり、その間の売上や信頼は戻りません。
普段から、相談できるIT・セキュリティの専門家とつながっておくことが大切です。 顧問契約・スポット支援・クラウドSOC(監視サービス)など、規模に応じた方法はあります。 “何かあったときの連絡先”を決めておく——それが、AI時代の備えです。
AIは脅威でもあり、最強の防御ツールでもあります。 生成AIを使うことで仕事が効率化する一方、その同じ技術が攻撃を加速させる。 だからこそ、AIを“知らないまま使う”ことが最も危険です。
これからの中小企業に求められるのは、「AIを正しく使い、AIに負けない仕組みを持つ」こと。 攻めのDXと同じように、守るDXにもAIを活かす発想が必要です。
DXの第一歩は、攻める準備ではなく“守る習慣”から。
セールスシードでは、中小企業向けにVPN設定、バックアップ体制構築、セキュリティ教育支援など、“止まらない会社づくり”を支援しています。